延命治療に正解はありません。だからこそ「本人の気持ち」が大切です。

終活についてお話をしていると、
「延命治療については、まだ何も考えていません。」
という方が少なくありません。
しかし実際には、突然その判断を迫られることがあります。
しかも、そのときにはご本人が認知症などで意思を伝えることが難しい場合もあります。
延命治療を希望するのか、希望しないのか。
どちらが正解ということではありません。
大切なのは、ご本人がどう考えていたのかをご家族が知っていることです。
保険証の中に入っていた一枚のメモ
以前、こんなお話を伺いました。
お母様は何度か入退院を繰り返しておられ、その頃には認知症の症状もあり、ご本人へ治療方針を確認することが難しい状態だったそうです。
入院するたびに、医師からご家族へ
「延命治療について、どのようにお考えですか。」
と確認がありました。
そのとき、ご家族は保険証の中に一枚の紙が入っていることを思い出したそうです。
そこには、
「一切の延命は希望しません」
という一文と、ご本人の署名が書かれていました。
立派な書類ではありません。
長年持ち歩いていたため紙はよれよれで、文字も少し震えていたそうです。
それでも、そのメモを医師へお渡しすると、その場の空気が少し和らいだように感じたと話してくださいました。
ご本人の意思が残されていたことで、ご家族も迷いが少なくなり、治療方針について落ち着いて話し合うことができたそうです。
医師にとっても、ご本人の意思が分かることは、治療の方向性を考えるうえで大切な手がかりになるのではないでしょうか。
そのメモが生かされた日
それからしばらくして、お母様は誤嚥がきっかけで呼吸が止まってしまったそうです。
医療スタッフは心臓マッサージなどの救命処置を始めました。
しかし、その場でご本人が残していた
「一切の延命は希望しません」
という意思が確認されました。
その意思を尊重し、救命処置は中止され、お母様は穏やかに最期を迎えられたそうです。
ご家族も、
「これは母が望んでいたことだから。」
と、その最期を受け入れることができたと話してくださいました。
私は、このお話を聞いて改めて感じました。
ご本人の意思が書き残されていたことは、ご本人のためだけではなく、ご家族が迷わず見送るためでもあったのだと。
「できる限り延命してほしい」という考え方もあります
一方で、別の方からこのようなお話も伺いました。
ご本人は普段から、
「助かる方法があるなら、できる限りの治療を受けたい。」
「どんな状態になっても、生きられる可能性があるなら延命してほしい。」
と、ご家族へ話されていたそうです。
その言葉があったからこそ、ご家族は迷いながらも、
「これは本人が望んでいたこと。」
と受け止め、治療方針を決めることができたそうです。
大切なのは「延命する・しない」ではありません
この二つのお話から分かるのは、
延命治療を希望することも、
延命治療を希望しないことも、
どちらも間違いではないということです。
人それぞれ価値観も人生観も違います。
だからこそ、正解を決めることはできません。
大切なのは、
ご本人の気持ちをご家族が知っていること。
その一言があるだけで、ご家族は「本人ならどう思っただろう」と悩み続けずに済むかもしれません。
今の気持ちを書き残してみませんか
延命治療について考えることは、決して簡単ではありません。
「まだ決めていない。」
という気持ちでも構いません。
「家族と相談して決めてほしい。」
という考え方でも構いません。
大切なのは、今の気持ちを書き残しておくことです。
気持ちは変わってもいいのです。
そのときは書き直せば大丈夫です。
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延命治療についての考えや、
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全部を書く必要はありません。
思いついたところから少しずつ書いてみてください。
延命治療について考える前に知っておきたい基礎知識や、ご本人の意思を家族へ伝えておく大切さについては以下の記事でご紹介しています。
まとめ
延命治療について考えることは、「命を諦める」ことでも、「治療を続ける」と決めることでもありません。
ご本人の意思をご家族へ伝えておくことです。
その意思は、ご家族にとっても、医療に携わる方にとっても、大切な道しるべになることがあります。
正解を書く必要はありません。
まずは今の気持ちを、一言だけでも書き残してみませんか。

