親が「お金をかけなくていい」と言うとき、どう考えるべきか

― 事前相談で整理しておきたい本当のポイント ―
終活や事前相談の中で、親御さんからよく聞く言葉があります。
「私のお葬式は、直葬でいい」
「お金をかけなくていいから」
この言葉は、とてもはっきりしているようで、
実は具体的なイメージが共有されていないことが少なくありません。
「直葬でいい」は、どこまで理解した言葉か
「直葬」という言葉は、
最近よく耳にするようになりました。
- 簡単
- 費用がかからない
- 家族に迷惑をかけない
そうしたイメージだけで選ばれているケースも多いのが現実です。
けれど、実際の直葬は――
一般的な「お別れ」とは大きく異なります。
直葬で起きる“お別れの現実”
事前相談の場で、
私たちは必ずこうお伝えします。
直葬の場合、ご家族が付き添う時間はありません。
お寺さんも来られません。
ご遺体は安置後、
次にご対面できるのは火葬場での、ほんのわずかな時間だけです。
すると、
「ええ、そうなん?」
「それは…ちょっとさびしいねぇ」
と、言葉を詰まらせる方が少なくありません。
ここで大切なのは、
直葬が良い・悪いという話ではありません。
「知ったうえで選んでいるかどうか」
それだけなのです。
「お金をかけない」と「寂しくない」は別の話
多くの親御さんが気にされているのは、
- 子どもに負担をかけたくない
- 形式にお金を使ってほしくない
という点です。
一方で、
- 誰にも会えない
- 顔を見る時間がほとんどない
- きちんとお別れできない
そこまで想像している方は、実は多くありません。
「費用を抑えること」と
「どんなお別れになるか」は、
必ずしもイコールではないのです。
直葬を選ぶ前に、知っておきたいもう一つの現実
一方で、「直葬にするなら」と、参列を遠慮される方も少なくありません。
とくに、故人様が最近まで社会生活を現役で送られていた場合、
「お別れはしたいけれど、直葬だから控えたほうがいいのだろうか」
「でも、お世話になったのだから、きちんとご挨拶だけでもしたい」
そんなふうに迷われる方が、実は一定数いらっしゃいます。
その結果、葬儀後に
「お線香の一本でもあげさせていただけませんか」
と、ご自宅へ弔問に来られるケースも珍しくありません。
ご自宅に来客があるということは、
ご家族にとっては想定していなかった対応や気遣いが生じることもあります。
直葬を選んだことで「何もせずに済む」と思っていたはずが、
結果として、あとから別のかたちで対応が必要になる――
そうした現実も、事前にはなかなか想像しにくい部分です。
事前相談で整理しておきたい視点
コラムとして、ここで伝えたいのは一つです。
形式を決める前に、
「どんな時間を残したいか」を考えてほしい。
たとえば、
- 家族が集まる時間は必要か
- 顔を見てお別れしたいか
- 宗教者に来てもらいたいか
これらを一度言葉にしてから、
その条件に合う形を選ぶ。
そうすると、
直葬が合う方もいれば、
「最低限のお別れ」は必要だと気づく方もいます。
すべてを決めなくていい、という選択
終活というと、
「きちんと決めておかないといけない」
と思われがちです。
でも実際は、
- 絶対に嫌なこと
- これは譲れない、ということ
それだけ決めて、
あとは残される人に委ねる。
それも、立派な終活です。
むしろ、
何も話していない状態より、
ずっと親切な選択だと私たちは思っています。
まとめ:言葉の奥にある本音を見る
「お金をかけなくていい」
「直葬でいい」
その言葉の奥には、
家族への思いやりがあります。
だからこそ、
その言葉をそのまま受け取るのではなく、
- どうしてそう思ったのか
- 何を一番大切にしているのか
そこを一緒に確認することが、
事前相談のいちばんの意味なのかもしれません。
葬儀のかたちは、正解・不正解で決めるものではありません。
ただ、選んだかたちによって「あとから起こりうること」も知った上で話し合えるかどうかが、残される方の負担を大きく左右します。
実際の事前相談の現場では、親御さんとご家族の思いがすれ違い、言葉にできないまま話が進まなくなることもあります。
そうした場面で私たちが立ち会った、ある親子のやりとりをスタッフブログでご紹介しています。
▶ 「そんなにお金をかけなくていい」——事前相談でよく出会う親子のすれ違い

