広島市で考える「お一人様の終活」― 身寄りがなくても、最期まで自分で決めるために(第5回)

不安だから全部用意する?それとも任せる?——制度とお金の“ちょうどいい線”
終活について調べ始めると、
エンディングノート、後見制度、死後事務委任、行政の仕組み……
次々と情報が出てきます。
すると多くの方が、こう感じます。
何か足りなかったら不安
いっそ、全部用意したほうがいいのでは?
でも一方で、
信頼できる人に任せればいい
細かいことは決めなくても大丈夫
そんな声もあります。
実はこのどちらも、
**お一人様の終活では“行き過ぎると危険”**です。
今回は、制度とお金の現実を踏まえて
「ちょうどいい線」の考え方を整理します。
■ 「不安だから全部用意する」は安心につながらないこともある
後見制度
死後事務委任契約
専門職への依頼
これらをすべて用意すれば、
たしかに制度上は安心に見えます。
ですが現実には、
- 費用が想定以上にかかる
- 管理される範囲が広くなりすぎる
- 本人の自由が減る
といったことも起こり得ます。
**制度は“保険”ではなく、“道具”**です。
使いすぎれば、かえって生きづらくなることもあります。
■ でも「任せれば何とかなる」も危ない
反対に、
- 親しい知人がいるから大丈夫
- その人が動いてくれるはず
と考えて、何も準備しないケース。
これも、現場ではよく問題になります。
なぜなら——
■ 亡くなった時点で、銀行口座は凍結されるから
本人が亡くなったことが金融機関に伝わると、
銀行口座は原則として凍結されます。
凍結されると、
- 引き出し
- 振り込み
- 公共料金の支払い
ほとんどができなくなります。
たとえ、
死後のことをお願いしていた知人であっても、
自由にお金を使うことはできません。
■ 善意で動いてくれる人ほど、動けなくなる現実
お一人様の終活では、
- 法的な権限はない
- 相続人でもない
それでも「何とかしてあげよう」と
善意で動いてくれる人が出てきます。
ですが、
- 葬儀社への支払い
- 火葬・納骨の費用
- 交通費や立替金
一番最初にお金が必要なのに、口座は凍結されている。
この状態で、
立て替えてほしい
と言われた側の負担は、かなり大きいものです。
■ 「任せる」なら、お金の準備もセットで考える
死後のことを知人に託すのであれば、
気持ちだけでなく、段取りも必要です。
たとえば、
- 死後にかかる費用の目安を出す
- 誰が、どこまで支払うのかを決める
- 立替が発生しない形を考える
一つの方法として、
あらかじめ必要な費用を渡しておく
という選択肢もあります。
これは、
善意で動いてくれる人を守るための準備でもあります。
■ 制度・人・行政を「全部」ではなく「組み合わせる」
お一人様の終活で大切なのは、
- 制度でカバーする部分
- 人に託す部分
- 行政に委ねる部分
を分けて考えることです。
たとえば、
- 生前の判断が不安 → 後見制度
- 死後の実務が不安 → 死後事務委任
- 最低限でいい部分 → 行政対応
「全部用意する」でも
「何も用意しない」でもなく、
自分に合った組み合わせを探すことが現実的です。
■ 広島市で考える場合の安心材料
広島市には、
- 「いきいき人生ノート」
- 区役所「地域支えあい課」での相談
- 身寄りのない方への行政対応
といった、最低限のセーフティネットがあります。
だからこそ、
すべてを民間契約で固めなければならない
と考える必要はありません。
行政が担える部分を知ったうえで、足りないところだけ補う。
これが、無理のない終活です。
■ 「迷惑をかけない終活」とは
誰にも迷惑をかけない、というのは
誰にも頼らないことではありません。
- 役割を決める
- 範囲を決める
- お金の段取りをつける
これができていれば、
周囲は「突然丸投げされる」ことがなくなります。
それが結果的に、
いちばん迷惑をかけない終活になります。
■ 次回予告:亡くなったあと、その後どうなる?
最終回では、
- 火葬後、遺骨はどうなるのか
- 納骨しない選択はどう扱われるのか
- 広島での供養の現実
を、現場ベースでお話しします。
「最後まで、ちゃんと知っておく」ための回です。

