広島市で考える「お一人様の終活」― 身寄りがなくても、最期まで自分で決めるために(第4回)

希望はどう残す?——エンディングノート・死後事務・現実的な落としどころ
「エンディングノートを書いておけば安心」
そう思って終活を始める方は多いかもしれません。
けれど、お一人様の場合、
ここで必ず壁にぶつかります。
- 書いたノートを、誰が見つけるのか
- その内容を、誰が実行するのか
- そもそも、死後のことを頼める立場の人がいるのか
今回は、
**「希望を残す方法」と「実際に動かす人の問題」**を、現実ベースで整理します。
■ エンディングノートの役割と限界
エンディングノートは、
- 自分の考えを整理する
- 希望を書き出す
- 周囲に気持ちを伝える
という点では、とても有効です。
ただし、はっきり言うと
法的な強制力はありません。
お一人様の場合、現場ではこんなことが起こります。
- ノートは自宅にあったが、火葬後に見つかった
- 内容が抽象的で、判断に使えなかった
- 書いてあるが、誰も実行できなかった
「書いたのに使われない」
これは、珍しい話ではありません。
■ ケアマネジャーさんに託せば安心?という誤解
「じゃあ、ケアマネさんにエンディングノートを預ければいいのでは?」
そう考える方もいらっしゃいます。
ですが、ここにも大きな誤解があります。
ケアマネジャーは、死後の事務を行う立場ではありません。
- 介護サービスの調整が役割
- 契約は原則「生前まで」
- 死後の手続きや判断を行う権限はない
つまり、
気持ちを伝えることはできても、実行を任せる契約ではないのです。
■ 死後事務委任契約という選択肢
そこで出てくるのが
死後事務委任契約です。
これは、
- 葬儀・火葬の手続き
- 役所への届出
- 納骨・供養の手配
- 賃貸住宅の解約や簡単な事務
などを、
あらかじめ第三者に依頼しておく契約です。
ただし、ここでも現実があります。
・専門職に依頼すれば、費用はかかる
司法書士・行政書士・弁護士などに依頼する場合、
当然ながら報酬が発生します。
「誰にも迷惑をかけたくない」と思っても、
完全に無料で完結する終活は、ほぼ存在しません。
大切なのは、
「費用をかけるか・かけないか」ではなく、
どこに、どの程度の負担をかけるかを自分で選ぶことです。
■ では、専門職に頼まない選択肢はないのか?
ここで、「じゃあどうすれば…?」と立ち止まる方も多いと思います。
実は、広島市には
お一人様でも使いやすい仕組みがあります。
■ 広島市の「いきいき人生ノート」という取り組み
広島市では、
「いきいき人生ノート」というエンディングノートを
無料で配布しています。
特徴的なのは、
ノートそのものだけで終わらせていない点です。
- 「この家にエンディングノートがあります」と示すシール
- 緊急連絡先を記入できるシール
これらを自宅の目立つ場所に貼っておくことで、
救急隊員の方にも情報が共有されている仕組みになっています。
つまり、
- 倒れたとき
- 緊急搬送されたとき
- 自宅で亡くなった場合
にも、
ノートの存在に気づいてもらえる可能性が高まるのです。
■ 託す人がいない場合は、区役所へ相談を
「それでも、頼れる人がいない…」
そう感じる方もいらっしゃると思います。
広島市では、
お一人様・身寄りのない方については、
各区役所の「地域支えあい課」が相談窓口になります。
- 自分の場合、どんな準備が現実的か
- どこまで行政が関われるのか
- 専門職を使うべきかどうか
状況によって、合う方法は違います。
「正解を決める場所」ではなく、
一緒に整理する場所として相談してみる価値はあります。
■ 希望を「書く」だけで終わらせないために
お一人様の終活で本当に大切なのは、
- 希望を書くこと
- その希望を誰が、どうやって実行できるかまで考えること
です。
エンディングノート
死後事務委任契約
行政の仕組み
これらはすべて、
単体ではなく、組み合わせて使うものです。
■ 次回予告:制度はどこまで必要?後見・委任の考え方
次回は、
- 任意後見・成年後見・死後事務委任の違い
- お一人様にとって「やりすぎ」にならない線引き
- 広島で相談先を探すときの考え方
をテーマに、
制度を現実的にどう使うかを整理します。
「難しいから後回し」になりがちな部分を、
現場目線で噛み砕いていきます。

