「そんなにお金をかけなくていい」——事前相談でよく出会う親子のすれ違い

親子で向き合う「事前相談」の現場から

事前相談の現場で、よく出会う光景があります。

それは、お母さんと娘さん、二人で来られる相談です。

娘さんは、お母さんのことが心配で、
「できるだけ母の思うように、最後を迎えさせてあげたい」
その一心で、勇気を出して一緒に葬儀社に来られます。

でも、いざ話が始まると——
お母さんはどこか上の空。

「そんなの必要ない」
「私には一円もお金をかけてほしくない」

こちらが説明をしても、話はなかなか前に進みません。
しだいに娘さんも、言葉を失っていきます。

母の思うようにしてあげたい。
でも、その気持ちの行き場がなくなってしまう。

一方で、お母さんの立場に立てば、気持ちはとてもはっきりしています。

「残された人には、残された人の生活がある」
「私のお葬式に使うお金があるなら、あなたたちが生きていくために使ってほしい」

——どちらも、深い愛情です。
ただ、その愛情がすれ違っている

お互いを思っているのに、
交流することのない、一方通行の愛情。

そんな空気を感じたとき、私はこう声をかけました。

「お母さん、
娘さんの『送ってあげたい』っていう気持ち、
わかってあげてほしいです」

すると、お母さんは堰を切ったように涙を流され、
ようやく本音を口にされました。

「あなたたちの生活に使ってほしいから」

——実は、こんな親子、とても多いのです。
そして、お母さんの愛は、とても頑なです。

だから私は、そんなとき、こんな話をします。

「けっきょく、最後に決めていくのは残された方です。
お互いを思いやる気持ちは、どちらも本物です。
だからこそ、親御さんは
“絶対に譲れない条件”だけを伝えて、
あとは残された方が自由に決められる
“余白”を残してあげてください」

終活は、準備の話であると同時に、
家族の気持ちをすり合わせる時間でもあります。

正解は一つではありません。
でも、話し合ったという事実が、
きっと残された方の支えになります。

親御さんが「お金をかけなくていい」「直葬でいい」と言われる背景には、さまざまな思いがあります。
その言葉をどう受け止め、事前相談で何を整理しておくべきかについては、こちらのコラムでもまとめています。
▶ 親が「お金をかけなくていい」と言うとき、どう考えるべきか

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